葬祭プランナーのホッと一息
死に顔は見られたくないの…
この時期になると思い出します。
3年程前に弊社の葬儀に関するイベントにご参加いただきその後、事前相談をされた方のお話です。
癌を患い余命宣告を受け最期を迎える準備をしておきたいと相談にこられたのでした。
お花は大好きなカサブランカとカスミ草、ポイントに真っ赤な薔薇でゴージャスな感じがいいな・・・などと気丈に、淡々と語っておりました。
そしてその中でも必ずお願いね・・・と約束したことがひとつあります。
「葬儀の時、死に顔だけはお友達にみせたくないの」と彼女は静かに仰いました。
お話を伺うほどに彼女の胸の奥にかかえる悲しみを痛いほど感じた私は「わかりました、お約束します」とお応えしました。
あれから3年、彼女を送る時を迎えました。
エンディングノートをしっかりと書かれていたため、ご家族との打合せもスムーズに進みましたが ”お顔を見せない”って参列してくださるお友達に失礼ではと大変心配されました。それでも、「私から皆様にご納得いただけるまで丁寧にお話致します。」とご家族にお願いし、彼女の希望を叶えることができました。
無宗教形式だったため、司会・進行のシナリオもオリジナルですから私が知る限りの彼女の心の内をお話させて頂き、最後に彼女からのメッセージを代読致しました。
最後のお花入れもご家族だけで手向けました。
誰一人としてそれでもお顔を見たいと仰る方はおりませんでした。
彼女の願い通りお友達は皆、「元気な彼女の笑顔を忘れない・・」と言って彼女を見送ってくださいました。
送られる方の気持ちも送る側の方の気持ちもよくわかります。
そのはざまで自分が担う役割を一生懸命こなすしかありませんでした。
今もなお、私の胸に残る強烈な一齣です。